【Hiei's eye カルテ9:砕け散ったプライド】



寝耳に水
その言葉がピタッとハマるんだろう

俺からの転院の話を耳にした伶菜から伝わってくる感情は
まさにそれだった。


「日詠・・せんせい?今、なんて言った?」

今すぐに理解しろというほうが無理だろう。


『君は、東京医科薬科大学病院に転院・・・転院したほうがいい。』

まだ俺は結論しか伝えてないのだから。



そのせいもあってか、伶菜は産科医師としての俺を求める。

・・・俺に診て欲しい
・・・もう無茶なことはしない


そして

「だって・・・先生、私に言ったじゃない!!!! 俺が何度でも、なんとしてでも助けるって!」

そう叫びながら。


伝えなきゃならないこと・・・それをまだ一言しか伝えていないのに
伶菜の動揺ぶりを目の当たりにしたことで

俺は自分がしていることが本当に正しいことなのか
もう迷い始めている



『でも、ここじゃ無理なんだ・・・・君のお腹の中にいる子供の心臓の手術ができる腕を持つ医者がここには・・・いない。』

今まで産科医師をやってきて、こんな状況なんて何度も経験してきた


『超音波検査で子供の心臓の異常が見つかったんだ。』

その都度、
”患者さんが納得いくまで説明して、理解してもらうんだ”
その想いは一切ブレることはなかった