結局、そのまま朝を迎えた。

お互いに朝の部活がない日は一緒に登校するけれど、今日は部活があるため、朝に顔を合わせることはなかった。

クラスも違うし、ここのところお弁当の時間になると毎日うちの教室までやって来ていた香も、今日はさすがに姿を見せなかった。


「天野、今日は来ないんだな」

お昼休みが終わりかける頃、不意に声をかけてきたのは篠原君だった。


「う、うん」

「昨日あれから、喧嘩になったとか?」


どうやらお見通しらしい。ずばり言い当てられて、何も答えられなくなる。

更には。


「……俺が関係してる?」

何となく、色々と察しているみたいだ。そう言えば、朝日君の正体が篠原君だということを香が知っていたのは、篠原君が香に話したからなのだろうか。そんなことも気になったけれど、今はそれよりも。


「篠原君は、何も気にしないでね」


これは、私と香の問題だ。

いつも篠原君に助けてもらっているけれど、毎回彼に頼るのは良くないと感じた。


それと同時に、とあることに気付く。


(……いつも私を助けてくれたのは、篠原君だけじゃないな。……香もだ)


子供の頃からしっかり者だった香は、引っ込み思案な私をいつも引っ張ってくれていた。
男子が苦手な私を、いつもたくさん気にかけてくれていた。

今回の件に関しては、香らしくなく、少しやり過ぎだったようにも思えるけれど……


それでも私、やっぱり香と仲直りしたい。そう強く思った。