しばらく歩いて、駅が見えなくなった頃、私は香の手を離し、足を止めた。


「もー。何なのよ、みずほ?」

香は首を傾げて私を見つめる。
でもその姿すら、私には妙にわざとらしく見えてしまう。



「やっぱり香、この間から私と松永君をくっつけようとしてるよね?」

「え? またその話?」


すると香は笑顔を浮かべながら、

「そういう訳じゃないって言ってるじゃん。みずほが付き合う相手は、みずほが決めることだし」


そう答えるけれど、どうしても納得出来なかった。


「その割には、発言とか言動とか、そうとしか思えないんだよ。今日、連絡もなしに私のこと待ってたのも、自然な流れで四人で帰るためだったんじゃない? あらかじめ一緒に帰る約束してたら、私が松永君達とは一緒に帰らないと思ったから、連絡しなかったんじゃない?」

私がはっきりとした口調でそう尋ねると、香は少しの沈黙の後、「はあ」と溜め息を吐き、サラサラのショートヘアの横毛を右耳にかけた。


「そうよ。みずほと松永が付き合えばいいと思って、そういう雰囲気になるように仕向けてた」

そして、自分の言動を認めた。どこか開き直っているかのようにも見える。