さっきは露骨に目を逸らしたくせに、今度は真剣すぎるくらいに俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。


……嘘を吐いているようには見えない。

確かに、こいつとみずほが親しげに話しているところはあまり見たことがない。
しかもここ数日は、篠原の方からみずほを避けているようにも感じていた。


……それでも俺には、こいつが自分の気持ちを誤魔化しているようにしか思えず、苛立ちが治らない。



「……それなら、バラしてやろうか。お前の正体を、みずほに」

ずっとすまし顔だった篠原の表情に、僅かに焦りの色が見えた。
眉間に皺を寄せ、俺の顔を無言で見つめる。



「小学生時代、みずほをいじめてた〝朝日君〟の正体がお前だって分かったら、みずほ懐かしがって笑ってくれるかな? そんな訳ないよな? お前のこと嫌いになるよな」


……でも篠原は、そこで何か言い返してくることはなかった。



「……好きにすれば」



その返事に、今度は俺からぶん殴りたくなるくらいにムカついた。



「嘘だよ。勝手にバラしたりしない。
勘違いするなよ、別にお前のためじゃない。そんなことしなくたって、俺はみずほのことを振り向かせてみせるからだ」