「うん。カエルが苦手なんだよね。でも、雨の日は出てくるから。しかも、物陰から急にぴょこっと」

「あはは、ぴょこっとね。そんなに嫌い? カエルに何か嫌な思い出でもあるの?」

「保育園くらいの時から苦手だったけど……小学生の時、同じクラスだった男の子にカエルを引き出しに入れられて、余計に苦手になったかな」


そこまで話したタイミングで、私は篠原君から話しかけられた。


「桜井。これ、今そこで小森先輩からお前に渡しといてって頼まれたんだけど」

「あっ。ありがとう、篠原君」

篠原君から受け取ったのは、来月の体育館使用スケジュール表だった。まず自分で目を通してから、人数分コピーを取って、部員の人達に渡さないといけない。


「あ、えと。今ね、私がカエルが苦手っていう話を松永君にしてたんだよ。篠原君にも、前にしたよね」

「ああ……」


……頑張って話しかけてみるけど、反応は薄い。
篠原君は、数日前から私への態度が急に素っ気なくなった、気がする。
元々決してフレンドリーなタイプではないけれど、もっと優しかったのに。


そんなことを考えていると、松永君が口を開く。


「でもさ、カエルを引き出しに入れたっていうその男子、みずほのことが好きだったから、先の裏返しでそーいうことしたんじゃね?」