◯梓side



思わず、天野の腕を掴んで裏庭まで連れてきてしまった。

いきなり申し訳ないことをしたとは思うものの、恐らくこいつは、俺のことに気付いたから。


周囲には俺達以外に誰もいない裏庭で、何て切り出そうか考えていると、先に天野が口を開く。



「とりあえず手、離してよ」

「あっ、悪い」

「うん。……ていうか篠原君ってさ、小学校の頃、私とみずほと同じクラスにいたよね?」


……やはり、バレていた。

誤魔化したところで、この状況の説明がつかない。
俺は大人しく「……ああ」と答えた。


「やっぱりね! みずほによく意地悪してたよね⁉︎」

「……してた」

「みずほの机にカエル入れて、超泣かせてたよね⁉︎」

「……泣かせました」

「だけどほんとはみずほのことが好きで、ラブレター渡してたよね⁉︎」

「渡し、ました……っ」

何だ、これ。拷問か。勘弁してくれ。
でも全て本当のことなので否定は出来ない。



「そうかー、まさか同じ高校なんてびっくりだよ。あ、でもみずほは全然気付いてないっぽいね」

「ああ……」


桜井からしたら、俺にいじめられていた頃の記憶なんて全て消し去りたいと思っていただろう。思い出さなくて当然かもしれない。



「……あれ? でも篠原君って、篠原梓って名前だよね? ラブレターには〝朝日〟って書いてあったって、みずほが言ってたけど?」

「……朝日は昔の名字。転校した後、両親が離婚して名字が篠原に変わったんだ」