「え……?」

「松永がお前にしようとしてたこと、知ってたから。意地でも事前にあいつを止めれたら良かったんだけど」

「そ、そんな!」

篠原君の前で、私はブンブンと首を左右に何度も振る。


「篠原君は私に、マネージャーになるなって言ってくれたじゃない……それなのに私が言うこと聞かなかったから……」

「……あの時、本当の理由を言おうかとも考えたけど、きっと傷付くだろうなと思ったから。だから、あんな言い方しか出来なかった」

「うん……」

「それに、女子の友達が欲しいっていう気持ちも分かってたし。あのクラスじゃ、女子の友達作れないもんな」


……会話をしたのはあの日が初めてだったのに、私のことそんなに考えてくれてたんだ……。

篠原君のそんな優しさに、私は全然気付いていなかった……。



「松永には、桜井を騙すのはやめろと何度も言ってたんだけどな。あいつ、〝分かった〟って言ってたから、諦めてくれたと思ってたんだ。それなのに、まさか前日になって電話してくるなんて」


……私のために、何度も話をしてくれていたんだ。

私が何も知らなかった間に、何度も……。



「……ありがとう、篠原君」

お礼を告げた瞬間、再び涙が頬を伝った。