「ここって……」

連れてこられたのは、私達が同じクラスだった教室があった、校舎の裏だった。


紅葉の木がとても綺麗にそびえていて、地面に赤い葉がたくさん散らばっている。


「……ここ、覚えてる?」

ゆっくりと口を開いた梓君に、そう尋ねられる。その質問の意味は、すぐに理解出来た。



「うん。梓君がラブレターを渡してくれた場所だね」



あの頃は今と違って雪が静かに舞っていたけれど、思い出はしっかりと覚えている。



「良かった」

小さく笑ってそう答えた梓君は、そのまま黙り込んでしまった。

しかし、再びゆっくりと口を開く。



「あの頃は不器用すぎて、自分の気持ちを手紙に綴るだけで精一杯だった」


今も不器用だけどな、と付け加えながらも、彼は言葉を続ける。



「だから、あの場で返事を聞くことも出来なかった。フラれるのは分かり切っていたから答えを聞くのが怖かったというのもあるけど。

でも、今度は絶対に離さないから……改めて、あの時の返事を聞かせてくれないか」



あの時の返事。


ラブレターには、小学生にしては綺麗な字で『ずっと好きでした』と書かれていた。



「うん。じゃあ言います」



あの頃は、意地悪ばかりしてくる〝朝日君〟のことは、好きにはなれなかった。
だけど、あの意地悪は全て愛情の裏返しだったということを、会えなくなってから知った。

再会した梓君は、相変わらず分かりにくい部分もあったけれどーー


いつも私を助けてくれた。




「私も、これからずっと好きでいてもいいですか?」




照れ臭く笑いながらそう伝えると、梓君も、見たことないくらいの笑顔を見せてくれた。



そしてーーお互いに引き寄せられるように。
私たちは、そっとキスを交わした。





梓君。これからもどうぞよろしくお願いします。



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