「悪かったな。せっかく来てもらったのに」

見慣れない街並みをてくてくと歩く。
隣を歩く梓君が、申し訳なさそうな顔をしてそう言った。


「ううん。急用なら仕方ないよ。少しの時間だけど、梓君のお母さんと話せて良かった」

今になって、少しだけ思い出してきた。梓君のお母さんは、昔からあんな風に明るくて、優しい人だった。
変わってなくて良かった。



「さて……どこ行く?」

梓君にそう聞かれるけれど、この辺には詳しくないし、どこにどんなお店があるのかも分からない為、ピンとこない。


……そうだ。



「ねえ、電車乗って、私達が通ってた小学校行ってみない?」

私の提案に、梓君が「え?」と首を傾げる。


「何だか急に、色んなことが懐かしくなってきちゃって。もし良かったら一緒に行ってみたいなって。どうかな?」

私の提案に、梓君は「じゃあ行ってみるか」と答えてくれた。