大体、私がこんな格好で客引きしたところで大した集客は見込めないどころか、皆帰ってしまうのでは?


「みずほ、もう諦めろ。まだ何か言いたいことがあるなら聞くけど」

「……私がこんな格好するより、松永君がホストの格好でもして客引きした方が、大量の女性客を捕まえられそうな気がする」

「あははっ! 言うようになったなー!」


けらけらと私の言葉を笑い飛ばす松永君。

香も松永君の味方だし、もう諦めるしかなさそう……。


すると、ちょうどその時。



「あ、篠原」

「えっ⁉︎」

香の声に反応した私は、瞬時に香と同じ方向に視線を向ける。

そこには確かに、こちらに向かって歩いてくる篠原君の姿があった。


な、何でこっちに来るのー!……って、ここがうちのクラスの屋台なんだから、こっちに来るのは当然なんだけど。


私は再び、香の後ろに隠れた。



篠原君に気付かれない内に、このままどこかへ去りたい……!

そう思うのに、松永君がニヤニヤしながら篠原君に話しかける。


「おう、篠原。お帰り」

「ああ。ストローの予備、買ってきた。というかお前は何をニヤニヤしてんだ?」

「ニヤニヤしたくもなるさ。お前の可愛い彼女がこんなエロ……いや、素敵な格好してんだからな!」


そう言って、松永君が私の腕を無理矢理引っ張り、香の背中の陰から引きずり出した。



「あっ……」

「……」


篠原君とバッチリ目が合ってしまった。
私の顔は、自分でも分かるくらいに真っ赤だ。