好きな女の子にだけ特別優しくしてればいいかなって思った、と彼は言った。


松永君の、どんな女の子に対しても平等に優しく接するところが好きだという女の子はたくさんいるはず。それを思うと、今後は女の子に優しくしないと言い張るのは少し寂しい気もしたけれど、


「私は凄く良いと思う」


そう言ったのは、私の隣にいた香だった。



「好きな女の子にだけ優しいって、凄い良いことじゃん。少なくとも、興味のない相手に思わせぶりな態度取るよりずっといい」


珍しい。香が男子をこんな風に褒めるなんて。しかも、最初はあんなに毛嫌いしてた松永君のことを褒めるなんて。


私と同じことを、松永君自身も感じたようで、「珍しい。お前が俺のことそんな風に言うなんて」と口にした。



「別に。思ったこと言っただけだし」

「ふーん。お前も俺のこと好きになったのかと思った」

「誰が何を好きになるって？　気持ち悪い」

「気持ち悪いって何だ！」


突然、ワーワーと口ゲンカを繰り広げた二人に思わずオロオロしてしまうも、二人とも何だか楽しそうな顔をしていることに気付く。


……この二人、結構お似合い？

さすがに口に出しては言えなかったけれど、そんな風にも感じた……いずれにせよ、香と松永君が前より仲良くなってるのは確かなようで、素直に嬉しいと感じた。