「でも、何か……実感湧かない」

私、本当に篠原君の彼女なのかな?って心配になってしまう。だから、恋人っぽいことをしてほしいなという気持ちになる。


……かと言って、いきなりキスとかされたら、絶対に心臓がもたないからそれはやめてほしいけど……!



「……じゃあ、こっち向いて」


彼の言葉に、思わずギクッとしてしまう。こっち向いてって……やっぱり、キス?

どうしよう。キスする覚悟は出来てないよ。でも、自分で言い出したことだから拒否も出来ない。



ギクシャクとした、壊れたオモチャみたいな動きで彼の方に身体を向ける。


すると、ゆっくりと彼の右手が私の肩に回される。

ーーやっぱりキスだっ‼︎


覚悟なんて出来てないけれど、反射的に目をギュッと瞑った。


……すると、肩に回された右手により、私の身体は彼の方へと引き寄せられた。


「わっ?」


ポス、と彼の胸の中に顔が埋まる。


えっと、これどういう状況だろう?

もしかして……抱き締められてる⁉︎


そう思ったのは、彼の片手が私の頭を優しく撫で、もう片方の手は腰に回され、ギュッと引き寄せられたから。


「しっ、篠原君⁉︎」

「……実感、湧いた?」

「う、うんっ、わい、湧きましたっ」


ドキドキしすぎて、心臓が爆発しそう。
今の私の顔、絶っ対に真っ赤になってる。

だからその顔を見られたくなかったのに、篠原君によって私の身体はゆっくりと彼から剥がされる。


だけど。

近距離から改めて向き合った彼の顔も、耳まで真っ赤になっていて。
……彼もドキドキしてくれてるのかな、って思えたんだ。