その後二人でやって来たのは、先日私が逃げてきた、屋上前の階段の踊り場。

階段の一番上の段に二人並んで腰をおろす。


今日も私達以外に人の気配はない。



「えっと、話って……?」

きっと告白のことだよね、とドキドキしながら問いかける。

すると篠原君は。



「ん。俺は今、結構怒ってるっていう話だ」

「え?」


予想と違う言葉が返ってきて、戸惑う。

予想と違うと言うよりは、期待と違うと言った方が正しいかもしれなかった。



「えっと。怒ってるとは……?」

「いじめられてること、何でもっと早く言ってくれなかった?」


あ……そういうことか……。


真剣な眼差しを向けられ、思わず言葉に詰まってしまう。
それでも、黙っている訳にもいかない。自分の気持ちを言葉にすることの大切さを実感したばかりだ。



「篠原君と松永君には絶対に言わないようにあの子達から釘を刺されてたというのもあるけど、そもそも二人に話したら心配かけると思って……」

「心配させろっていう話だ」

「……うん」


確かに、結果的に二人のことはかなり巻き込んでしまった。
それならば、事が大きくなる前に早く二人に相談すれば良かったのかもしれない。


「……まあ、俺達には言いにくい内容だったことには違いないんだろうけど。お前のことだから、天野にも心配かけまいと話してなかったんだろ? これからはせめて、もう少し誰かを頼れ」


眉をひそめた彼に力強くそう言われ、私は「うん。そうする」と答えた。