「それ以上やるならさすがに許さないけど?」

松永君はそう言って、彼女の手首を掴んだその手に、更に力を込める。


「い、痛っ」

黒髪の子が、痛さで顔を歪める。


松永君のこんな冷たい表情、初めて見たかもしれない。



「ねえ、ヤバくない? 逃げようよ」

「う、うん」

黒髪の子と一緒にいた、他の女の子達が不安そうな顔をしてお互いを見つめ合う。

そして、


「わ、私達はその子にそそのかされて連れてこられただけだから!」


松永君と篠原君にそう言って、黒髪の子を残して走り去っていってしまった。


黒髪の子は、松永君に捕まったままだ。



「お前は俺と一緒にちょっと来い。色々と話がある」

「えっ……」


黒髪の子は泣きそうな顔をしているも、松永君はお構いなしといった感じでどこかに連れていこうとする。



「後のことは、ちゃんと王子様らしく上手くやれよ」



その去り際、松永君が篠原君に何かを耳打ちしたようだけれど、私には聞こえなかった。




「……松永君、結構怒ってたよね? あの子と何を話すんだろう」

遠ざかっていく彼の背中を見つめながら、ぽつりと呟いた。


「まあ、あの黒髪の女子に関しては、松永は中学の時から付き纏われて、ずっと苛立ってたみたいだからな。これを機に、ガツンと言うんじゃないか?」

「そっか」