「篠原君にも松永君にも手を出して、気のある素振りをしてるんだもんねえ、桜井さんは」

教室中に聞こえるように、その女の子はそんな発言をする。

酷い。
だけど。
そんなことないって反論したいのに、喉の奥が震えて、声が出ない。

そんな理由で私が何も言えずにいると、教室のあちこちから


「男好きって、意外ー」

「大人しい子かと思ってたのに」

「意外に遊んでたりして」


などという声が聞こえてくる。


……やめて。

そう反論したいのに、怖くて出来ない、弱い自分が嫌になる。



「何か反論ある?」


女の子が、教室の入り口から私を睨み付けながら問いかけてくる。
そして。



「この間は松永君にひっついてたくせに、昨日は篠原君とデートとか、調子乗りすぎなんじゃないの⁉︎」


強い口調でそう言われ、言われていることは事実ではないのに足がすくむ。
周りからの視線を一斉に受けて、まるで自分が本当に悪いことをしたみたいな気分になる。


「……っ」

この空気に耐え切れなくなり、私は後方の扉から教室を飛び出した。