それでも、やはり松永君の様子はここでもおかしく見えた。

シュート練習の様子を見ていると、松永君のシュートは普段より荒く、いつもに比べて何度も外していた。


そして、その後の一対一の練習。

オフェンス側はシュートを決め、ディフェンス側はマンツーマンディフェンスでそれを阻止する。

ペアはローテーションで一回ごとに変わっていくけれど、松永君と篠原君がペアを組んで練習していた時、オフェンス側だった松永君の身体が篠原君にぶつかった。

怪我に繋がるほどの接触ではなかったし、練習中にぶつかることはよくあることなので、篠原君は対して気にしていなかったようだけれど、


「……ぶつかってきてんじゃねえよ!」


と怒鳴りながら、松永君が篠原君の胸倉を掴んだ。



「ま、松永君!」

私は慌てて二人の間に入り、松永君の右手を篠原君から剥がす。


「な、何やってるの! 暴力は駄目だよ!」

私がそう言うと、キャプテンもやって来て。


「今のは松永からぶつかっただろ。ていうかお前、今日は動きが荒いぞ」

と告げる。


「何かあったんなら、今日はもう家帰って、頭冷やせ。そんな動きで練習に参加されたら、他の部員が怪我するからな」

厳しい言い方だけれど、キャプテンなりの優しさかもしれない。


「……いえ。何でもありません。すみませんでした」

松永君はキャプテンに頭を下げ、顔を上げると篠原君にも「悪かった」と謝った。


練習は再開された。
その後の松永君の動きは、それまでよりは落ち着いて見えたけれど、普段と様子が違うのは明白で、心配だった。