その後も、特に気にするようなことは何もないまま、始業式とホームルームが終了し、放課後の部活の時間となった。


「みずほ、一緒に体育館行こうぜ」

部活に行く準備をしていたら松永君にそう声を掛けられた。
普段はそれぞれのタイミングで教室を出るから一瞬驚いてしまったけれど「うん」と答え、一緒に体育館へ向かうことに。


教室を後にすると、前方に篠原君を発見した。


「篠原君」


つい、反射的に名前を呼んでしまった。
篠原君は振り返り、足を止める。


「二人も体育館行くところ?」

「うん。三人で行こ」

「ああ」

体育館に向かって、今度は三人で廊下を歩く。

始業式の話とか、二学期の授業の話とか、たわいもない話をしなが歩いていく。

しかし、ふととある違和感に気付く。


ーー何か、松永君の口数が少ない?


黙り込んでいる訳ではないけれど……いつもはもっと自分から話すタイプだ。松永君が話してくれて、その話が楽しくて笑ったり、質問したり。
でも今は、彼が自分から話題を出さない。


体調悪いのかな? でも教室にいた時は普通に元気そうだったし、彼の方から一緒に部活に行こうと誘ってくれたし……。


「……松永君?」

恐る恐る名前を呼ぶと、


「ん? 何?」

と、いつもの笑顔を向けてくれる。


私の思い過ごし……かな?



きっとそうだろうと思い、「ううん。何でもない」と返した。


しかしその後も松永君はやっぱり口数が少なくて。
若干気になりつつも、体育館に到着したので、私達はそれぞれいつも通りのルーティンで部活を始めることになった。