その日の放課後は、バスケ部の練習はなかった。

いつもより少し早めの時間に帰宅した私は、家に通学鞄を置いた後、制服から私服に着替え、頃合いを見計らって香の家へと向かった。

玄関の前で香の帰宅を待っていると、しばらくして、制服姿の香が姿を見せた。


「みずほ……」

香と話がしたくてここで待っていた、というのは私が言わなくても伝わったと思う。香は、何とも言えない表情で私を見つめる。

しかし。


「……話すことなんて何もないからっ」

そう言って、私を横切って家の中へと入ろうとする香。

そんな彼女の右腕を掴み、半ば強引に引き止めた。


「待って。少しでいいから話そう」

私の言葉に、香はうんとは言わなかったけれど、嫌だと言う訳でもなく、再び私のことをじっと見つめた。


「……私、思ったの。私にとって篠原君は確かに特別な人、なのかもしれないけど……っ、それ以上に、私にとって香は大切な存在なんだって」


だからこんなことで香と話せなくなるのは嫌だと、彼女の目を真っ直ぐに見つめ、そう告げた。



「みずほ……」

「だ、だからっ、明日もまた来るし、それで駄目なら明後日もまた来る! 香と仲直り出来るまで、毎日家に来るから!」


そう伝え終えると、私は香に背を向け、自分の家へ帰ろうとした。


けれど。