そして、私の元へと近づいてくる。


「...遅刻なんだけど。」


それだけ言って先に歩いていってしまう。


私は小走りで追いつき、話しかける。


「浴衣...なんだね。」


私の言葉が聞こえているのかいないのか。


何も答えずまた先に行ってしまう。


歩幅が違うのは分かってるんだけどだんだん離れて行ってしまう。


私は追いつこうと小走りで佐久間くんの元へ行こうとする。


そしてやっと追いついた時。


私は佐久間くんの浴衣の袖をキュッと摘んだ。


「......なに。」


「はやい。」


やっと目が合った。


そして、


するりと手が重なった。


「なら、俺の傍から離れないで。」


耳元で低く、そう言われた。


私はギュッと手を握り、くっ付いた。


離れないという意味を込めて。





会場に着くと人が溢れていた。


どこを見渡しても人しかいない。


「すごい人だね。」


思わず握っている手を強くしてしまう。


それに気づいたのか、佐久間くんは手を絡める形に。


それは俗に言う恋人繋ぎ。


私の心拍数は上がりっぱなし。