薬を飲み終えた杏は、
あまりの恥ずかしさから、
下を向いたまま顔を上げられない。
一刻も早くこの場から、
立ち去りたいと願った。
「ほら、まだ終わってないよ。もう一度口開けて」
医療用の白い手袋をした
細くて長い先生の指が、
そっと杏の顎を軽く持ち上げ、
杏は先生を少し見上げる格好になる。
(顔、近すぎッ…)
鼻筋が通り、透き通ったような目と肌は、
病院一かっこいいと評判が高いのも納得できる。
「ねぇ、鈴木さん聞いてる?」
さっきから至近距離で見つめられ、
ドキドキが止まらない。
杏は恥ずかしさを隠しながら
慌てて口を開ける。
