あまりの呆気なさに驚く杏。


今までの緊張が一気に抜けたせいで、
再び睡魔が襲いかかった。



「もう遅いからこのままゆっくり休んでいいよ、そばにいるから。何かあれば呼んで」



杏はコクンと頷いた。



すぐにでも寝そうな杏に、
先生はブランケットを探しに行った。


しばらくして戻ると、
杏は既に目を閉じていた。


先生は杏にブランケットをかけてから、
杏の頭にそっと手を置く。



「…頑張ったね、おやすみ」



囁くような甘い先生の声が
耳の近くで聞こえた。



意識が遠のいていく中、
さっきの注射のときとは違い、


杏はすんなりと先生の手を受け入れていた。



その優しくて温かい手のひらを感じながら
深い眠りへとついた。