「あ、ありがとうございます。でも……先生、どうしてこんな時間に?」
ようやく声が出た。
渇いた喉のせいもあって、
少しだけかすれている気がする。
先生は特に驚くでもなく、淡々と答えた。
「今日は当直だからね」
そう答えると
私と同じミネラルウォーターを選ぶ先生。
すっと腰をかがめて、
取り出し口に手をのばす。
さりげない一連の動作なのに、
見ているだけでなぜか胸がドキッとする。
「でもその質問、本当はこっちが聞きたいかな。こんな時間に、どうしたの?」
一瞬、言葉が出なかった。
“頭が痛くて、どうしても水が欲しかったから”
なんて言ったら、
先生に心配かけちゃうかもしれない。
何よりまた迷惑になるんじゃないか
と思うと怖かった。
