「あっ、それ…」
先生が買ってきてくれたのは、
私がよく飲むお気に入りのコーヒーだった。
「もしかして、先生もこれ好きなんですか?」
「そう、休憩のときはやっぱりこれかな〜」
何気ない先生との会話で、
杏は少しずつ落ち着きを取り戻せた。
外からの雨の音が微かに聞こえる車内。
コーヒーと共にココロが温まっていく。
「…それで、カギないんだよね?」
コーヒーを飲み終える頃、
はっと我に返る杏。
「…はい。どこ探してもなくて」
先生も車内を探してくれたけど
やっぱり見つからなかったみたい。
どうしよう。
本当にこのまま部屋に入れなかったら——
不安が胸に広がりかけたときだった。
「そしたら、もう少しだけ入院にしようか?まだ空きはあると思うから」
