「…素直になるのが怖いんです」


杏の小さな声で先生が振り向く。


「怖い…?」


今ならちゃんと言葉にして話せる気がする。


この機会を逃したら、恐らく
もう一生伝えることはできないだろう。



「私の弱いところ、誰かに見せたら自分が崩れちゃう気がして…。

だから…ずっと、負けないように平気なふりしたり、体調悪くても、いつも無理しちゃうんです。

でもそれでいつも先生を困らせていて…ハハ」


今まで自分の中だけで感じていたことを、
こんなふうに誰かと共有するのは初めてだった。



「なるほどね」