大人になってから、 そんな言葉を杏にかけてくれる人は 先生が初めてだった。 杏の小さい頃、ココロの中に広がった ブラックホールのような暗い穴。 それは月日が経つに連れて少しずつ ゆっくりと、大きく深くなっていた。 そんな黒い闇みたいなものを包み込んで、 いつもどこか遠くへ 消し去ってしまうような強い光。 それが広瀬先生だった。 「はい、これ使って」 先生は机の上にあったティッシュを 杏に手渡すと、立ち上がった。