「Unknown?」

対して仲良くもないのにつるんでいる、クラスメイト。
そいつが俺にUnknownという芸能人の存在を教えてくれた。


「そう! つかさん知らないの?」
「知らないな。ゲーノージンとか興味ないから」
「そーだよなあ、天下のつかさんはリアルでモテモテだから芸能人に夢見る必要ねーんだよなあ」
「お前バカにしてるだろ」


小突いてやれば、いえいえ滅相もありませーんとそいつはへらへら笑った。
確実にバカにしている。

「ホントさ、俺心配なんだよ? つかさん好きなものねーじゃん。それってどうよ? 高校生なんだよ??」
「……いーんだよ、大人になったら嫌でも忙しくなんだろ」
「そりゃそうだけどさあ」

予鈴が鳴り、席につく。

ふと目がいったのは、というか自然と目がいくのだが、俺の目の前に座る少女。
ごついヘッドフォンを外して、教科書を開いている。


「(相変わらず今日も綺麗な髪)」


「……なに」
「あ、いや、なんでもない」


見すぎていたのか、その少女、麻木ヒナノは振り返った。
長めの前髪で目が少し隠れていてよく見えないけれど、


凛としたその瞳を、俺は、そのときしっかりと見たのだ。



「(……被写体になってくれねーかな)」



俺、安桜司。

自分で言うのもなんだが人間嫌いな俺は、じいちゃんとばあちゃんしか知らない趣味がある。



「(今日下校したら、少しカメラ持って出掛けるか)」


カメラ。

俺の趣味は、写真撮影。



そういえば


「(Unknownって、どんなやつなんだろ)」


こっそり、机の下で取り出したスマートフォンで、撮影スポットを検索する前にUnknownと調べてみた。