「殿下! 王の容体は?」

 すぐに扉の外に立っていた二人の従者がツェリウス王子に尋ねた。

「今は落ち着いている。この者たちを書庫に案内してくる。デュックスは中で王を看ている」
「書庫って……殿下!」

 顔も見ずに早口で言って廊下を進んでいく王子をクラヴィスさんが追いかけてくる。
 フィグラリースさんはこちらを気にしながらもデュックス王子のいる王の寝室の前に留まった。

「アルさん、大丈夫ですか?」

 私は王子のすぐ後ろを歩くアルさんに小声で訊く。

「え? あぁ、心配かけちゃってごめんね」
「全くだらしのない。医者の貴様が心配されてどうする」

 キツく突っ込んだのセリーンだ。

「はっはは……いや、でも、あれはヤバイって」
「ヤバイ?」

 アルさんは神妙な顔で頷いてから、ふと私の背後を見た。

「そーいやアイツは?」
「あ、ラグならあのまま控えの間に。なんかオレは行かない方がいいとか言って……」
「あー……確かにアイツは来ないで正解かもな」
「え?」
「とにかく、マジで早く治す方法見つけねぇと、あの王様、惨い死に方しちまうぞ」

 その囁くような小さな声にぞっと背筋が冷たくなった。