「アルさん!?」
「デイヴィス!?」

 肩で息をしながらアルさんはこちらを見上げた。
 暗がりでもわかるほどに顔色が悪い。

「すみません、ちょっとばかり力を使い過ぎてしまったようで。……大丈夫です」

 苦笑しながら言って、彼はベッド脇の棚を支えにゆっくりと立ち上がった。

(全然大丈夫そうじゃないのに……)

 術を使った後こんなふうになった彼はこれまで見たことがない。
 彼は王様を見下ろしながら言う。

「角は消えましたが、病が治ったわけではありません。――ツェリウス殿下」
「え?」

 急に呼ばれたツェリウス王子が驚いた声を上げる。

「やはり、例の書庫を調べさせてもらってよろしいですか? おそらくはそこにこの病を治す方法があるかと」

 ――そうか。今ここにいる皆の前で話しておけば、例の王族しか入れないという書庫に入りやすい。本当は王様にも聞いて欲しかったけれど……。

 その意図を汲んでくれたらしい王子はしっかりと頷いた。

「あぁ。王に代わって僕が許可する」
「ありがとうございます」

 アルさんは頭を下げた。
 王妃様もデュックス殿下もこちらのやり取りを不思議そうに見ているだけで、止めはしなかった。

「早速案内しよう。デュックス、このまま王を頼む。何かあったら書庫に呼びに来てくれ」
「は、はい!」

 デュックス王子はお兄さんに言われてびしっと背筋を伸ばした。
 そして、私たちはツェリウス王子について王の寝室を出たのだった。