「うぅっ!」

 途端、王様は一際大きく呻いて全身を硬直させた。

「父さま! 父さま頑張ってください!」

 たまらなくなったのかデュックス王子がアルさんのすぐ横で叫ぶ。
 王妃様は見ていられなくなったのだろう、震える両手で顔を覆ってしまった。

 アルさんも苦悶の表情を浮かべていた。痛みに耐えるように歯を食いしばり、まるで何か見えない敵と戦っているみたいだ。

(アルさん頑張って……!)

 祈るように胸の前で両手を握る。

 効果は徐々に現れてきた。
 荒かった王様の呼吸が次第に緩やかになり、あんなに深く刻まれていた眉間の皴が取れ、穏やかな表情になっていく。

 そして。

「……ふぅ」

 アルさんが息を吐き手を離すと、そこにあった角が無くなっていた。

「やった!」

 思わず一番に声を上げてしまい、慌てて口を塞ぐ。

 角は消えたが、紋様の方は全く消えていない。
 それでも、効果はあったのだ。
 王様は今静かな寝息を立て眠っている。
 王妃様はそんな王様を見てゆっくりと肩を落としていき、もう一度顔を覆った。

 デュックス王子はごしごしと目を擦り涙を拭ってから、お父さんの手をぎゅっと握る。

「父さま、父さま!?」

 起こそうと声を掛けるデュックス王子をアルさんがやんわりと止める。

「殿下、今は休ませてさしあげましょう」
「あ、あぁ。そうだな、わかった。でもやっぱりデイヴィスは凄いな! ありがとう!」

 小声でお礼を言われアルさんは少し疲れた顔で微笑み、そのままガクンと膝をついてしまった。