(あ……)

 そうか。王子は私の求めるものが見つかるかもしれないと言っていた。
 もしそれが本当に元の世界へ帰る方法なのだとしたら……。

 私はゆっくりとラグを見る。

「……そいつの好きにすればいい」

 ラグの口から出たのはそんな素っ気ない言葉だった。
 セリーンが短く息を吐く。

「さっきは“オレから離れるな”と言っておいて今度は“好きにすればいい”か。どうしようもないな」
「え、お前そんなこと言ってたの?」

 アルさんが驚いたようにラグを見る。直後、大きな舌打ち。

「ごちゃごちゃうるせーんだよ! とにかく、オレがここに来た目的はこの胸糞悪ぃ呪いを解くためだ。それを忘れんな!」

 広い室内に響いた怒声に私は思わず肩を竦める。
 重苦しい沈黙の後、アルさんが額を押えながら溜め息交じりに言った。

「お前、なんだってそんなに……」

 と、アルさんが扉の方に視線をやる。
 そのときパタパタという足音が近づいてきて、勢いよく扉が開かれた。

「デイヴィス!」
「デュックス殿下?」

 呼ばれたアルさんがソファから立ち上がる。
 息を荒らげ部屋に入ってきたのはデュックス王子だった。

 その只ならぬ様子に嫌な予感が走る。
 今にも泣きそうな顔で、王子は叫んだ。

「今すぐに来て! 父さまが、父さまが……!!」