だが、王子は苛立ちを抑えるように息を吐き言った。

「いいから早く着替えてくれ。僕は早く宮殿に入りたいんだ」
「あ、すみません……」

 そうだ。つい興奮気味に話してしまったが、王子にとってビアンカの様子はおそらく全く関心のないこと。
 早速着替え始めているラグとアルさんに気が付き、私は慌てて包みから服を出した。

(えっと、どこで着替えよう)

 私がきょろきょろと辺りを見回していると、 

「あぁ、お二人はあちらの小屋でどうぞ」

笑顔のクラヴィスさんがそう言ってくれた。

 お礼を言って、同時に先ほどのドゥルスさんの言葉を思い出してしまった。

(この爽やかな笑顔が嘘なんてこと、ないですよね?)

「どうかしましたか?」

 首を傾げられ、慌てる。
 ついまじまじと見つめてしまっていた。

「い、いえ、なんでもないです! じゃ、着替えてきちゃいますね」

 私は彼に背を向け、セリーンと共に小屋に向かった。