「ふん、随分と若造だな。信用できるのか?」
「親父!」

 息子に諌められ父親はもう一度ふんっと鼻を鳴らしそっぽを向いてしまった。
 思ったよりも元気そうなのは良かったけれど、なんだか別の意味で心配になってくる。
 ここからその表情は見えないけれど、先ほどからずっと無言なラグ。

(だ、大丈夫かな)

 ハラハラしながらその背中を見つめていると、

「相変わらずの頑固者だな、ドゥルスよ」

突然、背後でそんな声が上がった。
 驚き振り返るとセリーンが妙に嬉しそうに目を細めていて。

「あぁ?」

 訝しげにこちらに視線を向けたのは父親。その瞳が驚きに見開かれていく。

「その赤毛……おめえ、ひょっとしてセリーンか!?」

(え、知り合い?)

 もう一度セリーンを見上げると彼女はやはり嬉しそうに頷いた。

「久しぶりだな、ドゥルス。元気そうで何よりだ」

 セリーンが言うと父親――ドゥルスという名らしい――は先ほどとはまるで別人のように顔を緩ませた。
 それどころかその眼にはうっすら涙まで浮かんでいるように見えて。

「久しぶりなんてもんじゃねぇだろ! おめえ……っ」

 立ち上がろうと腰を浮かせたドゥルスさんの顔が苦痛に歪む。

「あぁ、今は元気では無かったな。無理はするなドゥルス」

 支えようと近寄った息子を邪険に払いのけ、彼は再び怒りを露わにした。

「無理なんてしてねぇ! まったく、どいつもこいつも年寄扱いしやがって。俺はまだまだ現役だぞ!?」
「わかったわかった」