(良かったね、アルさん!)
そう頷いた矢先だ。再び彼はセリーンに熱い視線を向けた。
「セリーン。抱きしめてもいいか?」
「調子に乗るなよ」
「ですよねー!」
凄まじい形相で睨まれ、バっと天を仰いだアルさんを見て苦笑する。
(も~、折角いい雰囲気だったのに)
だが、アルさんは諦めなかった。
今度はいつもの彼らしいへらりとした笑みを浮かべ、右手を差し出した。
「せめて、握手だけでも……ダメか?」
「……」
するとセリーンは呆れたようにもう一度息を吐き、花を左手に持ち替えた。
無言で差し出された右手を見てアルさんは瞳を大きくし、それから飛びつくようにその手を両手でがっしりと掴んだ。
「俺、これっきりなんて思ってないからな。君は俺の運命の人だから、絶対にまた会いに行く。だから一旦、さよならだ」

(アルさん……?)
そんな普通の女の子ならどきっとしてしまいそうな台詞に、しかしセリーンが照れるわけもなく。
「ふん、わけのわからないことを。もう離せ」
アルさんの手をぞんざいに払うと彼女も馬車へと乗り込んだ。
でもアルさんはとても満足げな顔をしていて、私も自然と笑みがこぼれた。



