My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


(良かったね、アルさん!)

 そう頷いた矢先だ。再び彼はセリーンに熱い視線を向けた。

「セリーン。抱きしめてもいいか?」
「調子に乗るなよ」
「ですよねー!」

 凄まじい形相で睨まれ、バっと天を仰いだアルさんを見て苦笑する。

(も~、折角いい雰囲気だったのに)

 だが、アルさんは諦めなかった。
 今度はいつもの彼らしいへらりとした笑みを浮かべ、右手を差し出した。

「せめて、握手だけでも……ダメか?」
「……」

 するとセリーンは呆れたようにもう一度息を吐き、花を左手に持ち替えた。
 無言で差し出された右手を見てアルさんは瞳を大きくし、それから飛びつくようにその手を両手でがっしりと掴んだ。

「俺、これっきりなんて思ってないからな。君は俺の運命の人だから、絶対にまた会いに行く。だから一旦、さよならだ」



(アルさん……?)

 そんな普通の女の子ならどきっとしてしまいそうな台詞に、しかしセリーンが照れるわけもなく。

「ふん、わけのわからないことを。もう離せ」

 アルさんの手をぞんざいに払うと彼女も馬車へと乗り込んだ。
 でもアルさんはとても満足げな顔をしていて、私も自然と笑みがこぼれた。