王子の言っていた通り、城門を抜けたところに馬車が用意されていた。
大人しそうな2頭の馬の前で御者らしきおじさんが恭しくお辞儀をしている。
(馬というより、ロバ?)
そう、2頭いるその動物は馬よりロバに近い姿をしていた。
あのフィエールの相棒であるアレキサンダーの方がどちらかと言えば馬に近かった気がする。
でもこれならお尻の痛みはあまり気にしなくて良さそうだ。
「みんな、気を付けてな」
そんな声に振り返るとアルさんが王子たちと並んで私たちに微笑んでいた。
デュックス王子はあの後真っ赤な顏ですぐに宮殿へと戻ってしまったため、見送りはツェリウス王子とクラヴィスさん、そしてアルさんの3人だった。
……そう。ここでアルさんともお別れなのだ。
なんだか未だに実感が湧かない。
「ラグ、二人をちゃんと守るんだぞ」
「……」
でもラグは何も答えずさっさと一人馬車へと乗り込んでしまった。
そんな彼に苦笑してからアルさんは軽く咳払いし、私の隣にいるセリーンに熱い眼差しを向けた。
「セリーン。これを」
「!」
差し出された手には一輪の赤い花が握られていて、私は内心きゃーっと歓声を上げながらセリーンを見上げた。
セリーンは花が好きみたいだと伝えたことを覚えていてくれたのだろう。
流石の彼女も驚いた様子だ。
「昨日色々と面倒掛けちまったし、それにこの色、セリーンに似合うと思ってな。受け取ってくれないか?」
「……」
皆が見守る中、セリーンはゆっくりとその花を受け取った。
「花に、罪は無いからな」
そうしてまんざらでもなさそうにその花を見つめた彼女を見て、アルさんはぐっと拳を握り私に向かって片目を瞑ってみせた。



