「おっ、セリーンじゃねぇか! どうした。陛下に何か用か?」
王の間へ足を運ぶとそれまで硬い表情で扉の前に立っていたドゥルスさんの顔が一気に緩んだ。
「いや、お前にだ。私たちはもうこの城を去ることになったのでな。挨拶に来た」
「は!? 去るって、まさか今からか!?」
「あぁ」
ドゥルスさんに挨拶に来たのは私とセリーンだけ。ラグも誘ったのだが初対面で格好悪いところを見せてしまったせいか嫌そうな顏で断られてしまった。
アルさんはまだ何かドゥルスさんに思うところがあるのか、セリーンが他の男と仲良く話しているところなんて見たくない! と言ってやはりついては来なかった。
「待て待て。今夜の夜会にも出ないつもりか! うちの奴お前たちのためにっていつも以上に腕を振るってるぞ!?」
「それはとても有り難いが……急ぎの旅でな」
セリーンが苦笑しながら言うとドゥルスさんは大きく動かしていた腕を力無く下ろした。
「そうか……。てっきりもうしばらく居るもんだと」
「すまんな。私も一度くらい昔のようにお前と手合わせしてみたかった」
「おいやめろや、泣けてくるじゃねぇか!」
言いながらドゥルスさんはもう目の周りを真っ赤にしていた。
「相変わらず涙もろいな。奥方にもよろしく伝えてくれ。忙しいところを邪魔しては悪いからな」
「あぁ、わかった」
ずずっと鼻を啜りながらドゥルスさんが頷く。
「あとクストスやリトゥース、それにフォルゲンにもな」
フォルゲンさんの名が出た途端、ドゥルスさんの顔が引きつった。
それを見てセリーンは口の端を上げる。
「いい医者じゃないか。初孫、楽しみだな」
「ぅぐっ、……ま、まぁな。生まれてくる子にゃぁ罪はねぇ」
「ハハ。ドゥルスが祖父さんか。いつかまた会いにくる。それまでは元気でいてくれよドゥルス」
「勿論だ! じじいになっても俺はずっと現役だぞ!!」
そうして楽し気に笑い合う二人を見ながら、確かにアルさんは来なくて正解だったかもとちらっと思ってしまった。



