しんと静まり返った広間に、クラヴィスさんの少し焦りを帯びた声が大きく響く。

「例えば兄弟ですとか、親ってことも考えられるのではないですか?」

(兄弟か、親……)

 確かにそのほうが有り得そうなのに、なぜだか全くしっくりこない。
 他の皆も同じようで、誰も何も言わずまたしばらく沈黙が続いた。

「……どちらにしろ、行って確かめるしかねぇな」

 ラグの溜息交じりの声にセリーンが驚いたように振り向く。

「エクロッグへか?」
「ここからどのくらいの距離だ」
「……ビアンカはもう帰すのだろう? なら荒野をひたすら歩いてざっと半月はかかるぞ」

 そうだ。この後、もうビアンカとはお別れなのだ。

(荒野を、半月……)

 心の中で繰り返した言葉が足腰に重く圧し掛かった気がした。

「でしたら、徒歩で行くより船で海を渡ったほうが近道ではないですか?」
「船で?」
「はい」

 クラヴィスさんが笑顔で頷く。