――ン。

 ――華音。

 まただ。
 また、誰かの呼ぶ声がする。

 お母さん?
 お父さん?

 それとも――。



 ゆっくりと意識が浮上する。
 でもなんだか眩しくて、身体もだるくて、なかなか目を開けることが出来ない。

 ――私、いつの間に眠ったんだっけ……?

 思い出しながら、身じろぎする。と。

「カノン?」

 間近ではっきりと聞こえたその声にぱっと目を開ける。
 視界に映ったのは見慣れた赤色。

「気が付いたか」
「セリー……っ」

 出した声がびっくりするほど掠れていて軽く咳き込む。

「ほら、水だ」

 差し出されたコップを身体を起こして受け取る。
 喉を潤すようにゆっくりとそれを飲み干していき、はぁと息を吐いた。

「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」

 お蔭で今度はちゃんと声を出すことが出来た。
 セリーンは私からコップを受け取るとすぐそこの丸テーブルに置いた。

「ここは?」

 部屋の中を見回す。
 ベッドが二つ並んだ部屋はどうやら寝室のよう。

 ベッド脇の椅子に腰かけるセリーン以外に人はいない。
 ほかの部屋と同じ大きな窓からは眩しいほどの青空が見渡せた。

「客室だ。なかなか起きないから心配したぞ。もう昼過ぎだ」
「え」

 どうりで。このだるさは寝過ぎたとき特有のものだ。