「お前は、本当に他人のことばっかだな」
「そんなこと」
「セリーンの奴だ」

 反論しかけたところで顎で前方を指され、私は身を乗り出し彼の視線を追った。
 大分近付いてきたお城のバルコニーのひとつに特徴的な赤色。

「セリーン!!」

 大声でその名を呼ぶと届いたのか彼女が大きく手を振ってくれた。
 彼女一人だけのようだ。ということは、アルさんたちはまだクラヴィスさんを捜しているのだろうか。

「あ」

 そのときラグが小さく声を上げた。

「え?」

 見上げるとものすごく嫌そうに顔を引きつらせていて、私も「あ」と同じように声を上げていた。

「……塔に降りるか」
「え!?」
「オレが最後にあの部屋を出たままなら、窓が開いているはずだ」

 言うなりラグは急きょ城で一番高い塔へと進路を変更した。

「~~~!!」

 何かセリーンが叫んでいるのが聞こえた気がしたけれど、ラグは一切そちらを見ようとはしなかった。