「エルネストさん、あのお城の中にいたりして」

 不安を紛らわすため、冗談半分で言ってみる。

「なんかぴったりだよね。エルネストさんとあのお城」

 美しい城を振り返りながら続けると、

「しかし王子は知らないと言っていたのだろう?」

セリーンに大真面目に返されてしまった。

「う、うん。そうだったらいいなって思って」

 苦笑しながら誤魔化していると前方からイラついた声。

「本当に幽閉されているなら隠している可能性もある。それにあの王子が知らないだけかもしれない」

 それを聞いてふと気づく。

「もしかして、ラグが王子の護衛をOKしたのって、お城の中を調べたいから?」
「それもあるが……それより、さっきのアレはどういうことだ」

 いつ言われるかと思ったが、ここで言われてしまった。
 振り返り睨んできた彼に私は再びぶんぶんと首を振る。

「だから私は言ってないよ! ドナにしか、言ってない」

 舌打ちをしてラグは前に向き直る。

「あの女が喋ったってことか」
「ドナは喋ったりしないよ!」

 ドナは秘密をばらしてしまうような子ではない。
 それにあの時二人はとてもギクシャクしていて、そんな話が出来る状況ではなかったはずだ。