「本当に平気かな、アルさん」
王子にはああ言っていたけれど、つい先ほどまでの彼を思うとやはり不安が残る。
「心配するだけ損だぞ」
声がしたほうを見るとラグが先ほどのアルさんのようにソファに仰向けになっていた。
(自分だって、さっきは心配していたくせに)
そう思いつつ口に出せずにいると、セリーンが息を吐いた。
「一人で王子について行ったんだ。平気だということだろう」
「そう、だね」
彼女を見上げ、あれと思う。
口調はいつも通りなのに、廊下の先を見つめるその横顔がなんだかいつもよりも優しげに見えたのだ。
「それで、王は目を覚ましたのか?」
「う、うん!」
視線がぶつかり、私は慌てて頷いた。
(気のせいかな)
扉を閉め、ソファの方に向かいながら私は先ほどの様子を話していく。
王妃様が笛を吹いた途端、紋様が金色に光り出したこと。
一曲吹き終えるごとに身体の紋様が消えていったこと。――それを見て、王子が喜んでいたこと。
そしてすべての紋様が消えたとき、王様が目を覚ましたこと。
「凄かったんだよ。王妃様が笛を吹くたびに金色の光がぱーって消えていって」
私はその時のことを思い出しながら、隣に座ったセリーンに興奮気味に続けた。
「それに、その曲がまたとっても綺麗でね」
「歌うなよ」
頭の中に流れていた旋律がその一言でぴたりと止まる。
向かいのソファでずっと目を閉じて黙っているから眠ってしまったかと思いきや、その眉間にはたくさんの皴が寄っていた。
「……歌わないよ」
本当なら鼻歌くらい歌いたい気分ではあったけれど。



