セイレーンだということはすでに王子もクラヴィスさんも知っていることで、それは良い。しかし、今の言い方はまるで――。 ふと突き刺すような視線を感じて恐る恐る見上げれば案の定ラグがこちらを鋭く睨みつけていて、私は激しく首を振る。 (ドナには言っちゃったけど、王子とクラヴィスさんには絶対に言ってないはず……なのに) クラヴィスさんはそんな私たちを少し怪訝そうに見ているだけ。 だが王子は、動揺する私に追い打ちを掛けるようにもう一度意味ありげな笑みをくれたのだった。