――そういうわけで、安心して彼を残し部屋を出てこられたわけなのだけれど。
(セリーン、無事だよね……?)
先ほどのアルさんの台詞を思い出し、王子の肩越しにクラヴィスさんの背中を見つめる。
早く彼女に会って無事を確かめたいけれど、隠し通路の入口がどこにあるのかわからない私は前を行く彼らの歩調に合わせてついて行くしかない。
この静けさの中、足音を響かせないためにも走れないのはわかるけれど、気ばかり急いて兎に角もどかしかった。
どうか、ただの杞憂でありますように。そう願わずにはいられない。
中央階段を降りきり、中庭を囲む回廊を右に曲がったところで気付く。
昼と夜とで雰囲気は全く違うけれど、この順路には覚えがあった。
(もしかして、入口って……)
そして予想通り、クラヴィスさんが立ち止ったのはあの書庫塔の扉の前だった。
――この中に、隠し通路の入口が?
「私はここに」
クラヴィスさんは王子に手燭を渡し、私たちが入るとゆっくりと扉を閉めた。
塔の中に灯りはないようで、上に行くほど多くなる小窓から月明かりだろう淡い光が細い筋となって差し込んでいるだけだ。
だから王子の手元で揺れる小さな蝋燭の灯りだけが今は頼りだった。



