廊下を進みながら、昼間とは全く違う宮殿内の雰囲気に思わずごくりと喉が鳴っていた。
昼間はあんなに煌びやかに見えたのに、薄暗くひっそりと静まり返った今はまるで古びた洋館を模したお化け屋敷のようだ。等間隔に壁に取り付けられた頼りない蝋燭の灯りが、より一層その不気味さを演出しているように思えた。
一人だったらきっとなかなか足が進まなかっただろう。すぐ前を行く王子の背中を見て思った。先頭にはクラヴィスさん。そして私の後ろにはラグがいる。
「俺は大人しく留守番してるよ。カノンちゃんも行かなきゃまずいっしょ」
アルさんはそう言って王子の部屋に残った。
でも一人残ったわけではない。
「ブゥ、こいつが寝そうになったらその翼で叩き起こしてやれ」
「ぶっ」
相棒から頼まれたブゥはやる気を見せるようにその黒い翼をはためかせ、ソファの背もたれからじっとアルさんを見下ろした。
確かにあれで叩かれたら先ほどのラグのビンタと同じくらい痛そうだ。
アルさんは少し顔を引きつらせながらも、私たちに小声で「気を付けろよ」 と言った。



