極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

 考えもしなかった。お店がなくなることを。……弁当屋がなくなってしまったら、私と村瀬さんの関係はどうなってしまうのだろうか。

 会えるのは店先でだけ。村瀬さんは私が彼の会社の社員だということを知らない。もし自分の会社の社員だと知ったら、今までのように接してくれなくなるかもしれない。

 だから私は彼が副社長だと知ってからも、打ち明ける勇気が出なかった。

 きっと弁当屋がなくなったら、私たちの関係も終わりを迎えてしまうのではないだろうか。

 そんな思いがよぎるものの、心配するお母さんの前では言えない。笑顔を取り繕った。

「大丈夫だよ、お店がなくなっても、村瀬さんに連絡とる手段はあると思うし。……だからそんな心配しないで」

「さくら……」

「ね?」と言いながらお母さんの背中を優しく撫でると、やっと表情が和らいだ。

「そうよね、村瀬さんは約束を破るような人ではないでしょうし、うちの店が閉まっているのを見たら、きっと商店街の誰かに聞いて知る手段はあるわよね」

「うん、そうだよ」

 ずっと切磋琢磨してきた商店街のみんなには、明日にでも報告するとお父さんが言っていた。

 村瀬さんにだけではなく、店を閉めた後、閉店したことを伝えることができず、知らずに訪れたお客様にも、商店街のみんなが事情を説明してくれるだろう。