極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

 そんなこと考えたくないけれど、それだけの理由がなければ店を畳む理由として納得できないもの。

 口が止まらず、ふたりの答えを聞く前に次から次へと質問していたことに気づき、慌てて口を結んだ。そしてジッと両親の答えを待つ。

「いや、経営が苦しいわけでも、父さんと母さんが病気ってわけでもないんだ」

「じゃあどうして……?」

 すると両親は一瞬躊躇いながらも、その理由を話してくれた。

「実は栃木に住むおじいちゃんにね、癌が見つかって……」

「幸い手術で腫瘍を取ることができるようだが、しばらくは店に立つのは無理だろう」

 お父さんの父親であるおじいちゃんは、おばあちゃんと共に食堂を経営している。

 近くに大学があることから、客の大半は学生。料理はもちろん、おじいちゃんとおばあちゃんの親しみやすい人柄もまた人気で、連日多くの学生が詰めかけているとか。

 最後に会ったのは私が就職する前。これから社会人になる私におじいちゃんは、『さくらもじいちゃんと同じで、好きな仕事に就けて幸せだな。じいちゃんは死ぬまでこの仕事を続けるよ。だからさくらもそうなれるよう、がんばれ』って言ってくれたよね。

 そんなおじいちゃんが癌だなんて――。