専務の秘書には誠司さんの義妹にあたる小毬(こまり)さんが就き、収拾したわけだけれど、誠司さんはきっと複雑な気持ちでいると思う。

 でも誠司さんがなにも言わない限り、私も聞かないでいる。

 虫のいい話だとわかっているけれど、できることなら誠司さんと早乙女さんが、昔のような関係に戻れたら……と願ってしまう。

「電話で胎動を感じるようになったって父さんたちに話したら、楽しみだって言っていたから、もうそろそろ着くと思うぞ? 空港を出たって連絡が入ってからけっこう経つし」

 今日は、久しぶりにご両親が帰ってくる。この前は緊張していたし、滞在期間も短かったからあまり話せなかった分、今回は色々な話がしたいと思っている。私も楽しみだ。

「誠司さん、用意するのは紅茶で大丈夫ですか? 久しぶりの日本ですし、緑茶のほうがいいですかね?」

 家政婦さんは休み。お茶の準備は私がしなくてはいけない。

「なんでも大丈夫。それに俺が用意するからいいよ。さくらは父さんたちの相手をしてくれたらいい」

「いや、さすがにそれは……」

 そこまで言いかけた時、玄関のドアが開く音が聞こえてきた。