考え込んでいると、山浦さんに「なにか他に気になることがあったんですか？」と声をかけられた。

「あ、いえ……。たださっき、専務室を出たところで彩芽に呼び止められまして。そこで彼女にも勝次叔父さんと同じことを言われたんですよ。なぜかさくらのことをよく知っていましたし、妊娠していることも知っていて……」

　思ったことを口にすると、途端に山浦さんは顔をしかめた。

「そうでしたか」

　一言呟くと、なにやら考え込む姿に緊張がはしる。

　もしかしてなにかあるのだろうか。

　聞こうか迷っていると、山浦さんは神妙な面持ちで俺を見た。

「猪狩さんから口止めされていたので、副社長にはお伝えしなかったのですが……」

「え、さくらが俺に口止め？」

　思わず聞き返すと、山浦さんは申し訳なさそうに頷く。

「副社長が不在中に早乙女と秘書課の者数名が、数日間に渡って社員食堂にて猪狩さんに嫌がらせをしておりました」

「嫌がらせって……彩芽が？」

　信じられなくて目を白黒させてしまう。