「両親もさ、しばらくはさくらと実家で暮らすって言ったら、早く日本に帰りたいって言っていたよ。うちは男だけだし、弟は自分で会社を作って早くに結婚したけれど、一緒には暮らしていないから。とくに母さんが娘に憧れがあってさ。……さらには孫も生まれるんだ。本当、すごく喜んでいたよ」

 母さんは大喜びするだろうと予想できたけれど、父さんに関しては想定外だった。

 さくらに会えるのを楽しみにしていたし、孫が生まれたらしたいことを母さんと楽しそうに話していた。

 なにより俺が本当に結婚したいと思える人と出会えたことを、心から喜んでくれた。

 父さんもまた、母さんとは恋愛結婚だった。弟の将生もそうだ。出会いがないならば、見合いで知り合って好きになれた相手と結婚すればいいとまで言われたこともあり、心配かけていたんだと思う。だからさくらと出会うことができて、父さんを安心させることもでき、俺も嬉しく思う。

 そんなことを考えながら首都高を降りて一般道に入ると、鼻をすする音が聞こえてくる。

 赤信号で止まったタイミングで隣を見ると、さくらの瞳からは大粒の涙が零れていた。