少し歳の離れた弟のことが昔から可愛くてしかたがなかった。それは大人になった今も同じ。

 弟でもこんなに可愛いんだ。自分の子供を持ったら、俺はどうなってしまうのだろうか。――なんてことを、さくらと出会ってから何度も想像するようになった。

 だけどそれが現実となり、一年もしないうちに生まれてくるのかと思うと嬉しくて夢のようで、俺はこれまでの人生の中で一番浮かれているかもしれない。



 さくらから妊娠していると報告を受けた日の夜。最終便でシンガポールに戻り、真っ先に両親に会いに行った。

 さくらが妊娠していることを告げると、まずはふたりとも大喜びしてくれたが、籍を入れる前にさくらを身ごもらせてしまったことに対し父さんが激怒。

 彼女のご両親に一刻も早く謝罪しに行くように言われ、父さんたちもまた近いうちに一度帰国し、さくらやご両親に挨拶がしたいと言ってくれた。

 そしてなにがあっても全力で彼女を守れとも――。

 父さんにも力になってもらい、シンガポールで片づけなくてはいけない仕事を急ピッチで終わらせ、それから半月ほどで帰国。