極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

「いらっしゃいませ」

 フロアには弥生さんの声が響いている。

 こうして厨房からフロアを見渡すのは久しぶりかも。新鮮な気持ちで眺めては、追加の料理を作ったりしていると時間はあっという間に過ぎていく。

 そして閉店まで三十分を切った頃、やはり今日も早乙女さんたちがやって来た。

「さくらちゃん、来たよ」

 手が空き、食材の在庫チェックをしていると声をかけられた。すぐフロアに目を向けると、早乙女さんたちがトレーを手に、次々と料理を皿に盛っている。

「あぁ、またあんなに取って。……半分も食べられないくせに、どうしてあんなに取るのか」

 隣で嘆く彼女を宥めながら、早乙女さんたちに気づかれないよう、カウンターに近づいていく。

 もしかしたら私がフロアにいなければ、クレームをつけてこないかもしれない。それなら弥生さんに迷惑をかけることもないし、ありがたいんだけれど……。

 そんな私の願いも虚しく、それぞれ席につき、数口食べたところで早乙女さんは再び席を立った。

 そして真っ直ぐ向かう先は弥生さんのところ。だけど先手を取ったのは弥生さんだった。

「どうかされましたか?」

 弥生さんに対して早乙女さんは、片眉を上げた。

「どうもこうもないわ。春雨サラダ、なんか変な味がするんだけど。味つけを間違っていない? すっごいまずかったわよ」